ありがとうラマコーヒー

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《今日は長いです》

辻堂の浜竹商店街の先にあるラマコーヒーが昨日2/23で、惜しまれながら閉店した。
オーナーご夫妻は、8年間続いたカフェを閉じて、これからお野菜を育てていくことにしたそうです。

わたしは今、ベッドでこれを書いています。
ここのところの徹夜続きで、わたしは大磯市の翌日から、ついにどうにも起き上がれなくなっていたのだけれど、これだけはどうしても、最後に挨拶だけでも…と、ラマのファイナルディにヨロヨロとうかがった。

ラマは初めて連れて行ってもらった時から大好きだった。
店を作ったインチャリさんという方のセンス(一発でインチャリさんのファンになった)。店主のよしくんとその奥さんのちあきちゃんの人柄、きゅうちゃんいっちゃんの醸し出す空気感。ホッとする飲み物と体のことを考えた美味しいごはん、本棚に並ぶ店主の考え方や想いを表す数々の本、使い込まれたソファーやバラバラのテーブルや椅子たち、そしてラマをこよなく愛する多くのお客さんたち、なにもかもが渾然一体となって本当に素敵な空間を作り出していた。

最初に連れて行ってもらったのは、まだpsipsinaを始める数年前で、ラマはわたしがその頃、ちょっと前まで住んでいたメキシコの、大好きで通い詰めたカフェに似ていた。物理的にここが似ていると言えないにもかかわらず、なにもかもが似ているように思えた。
でも決定的に違うところもあった。それは店主の人柄が店全体に浸透していたこと。よしくんの誠実で暖かい人柄。どんなときも丁寧に人に接し、相手を大切にする思いやり深い性質が店全体に溢れていたこと。メキシコのカフェはもっと大きかったし、たくさんの人が働いていた。みんな気持ちのいい人たちではあったけれど、やはり店主が一人で切り盛りしている店とはちがう。たくさんの人が働いているところは、たしかに活気はあるけれど、店主のキャラクターが色濃く表れることはない。わたしは、ラマがメキシコのカフェに似ていたことよりなにより、そこが大好きだった。2階にラマスペースというギャラリーがあって、作家さんたちが多数出入りしているところもよかった。

よしくんとちあきちゃんはpsipsinaの第一号のお客さまでもあった。
psipsinaのオープン当日の昼間は大豪雨で、お客さまが一人も来ない中、よしくんとちあきちゃんは、雨をおして来てくれたのだ。それも、前日のオープニングパーティー後の仕込みが上手く繋げてない上に、わたしの手際も悪く、オープン時刻にまだパンが焼きあがってなかったのを、二人は雨の中を再度来店してパンを買ってくれた。

ラマに初めて行った頃は、少し遠くに住んでいて、店を始めてからは近くなったけれど、慣れない仕事に追われてなかなか行かれなかった。いつも心にあったけど、自分の店のことで時間が取れなかった。
わたしのかつての趣味はカフェ通いだった。カフェというものが根本的に大好きで、わたしはパン屋でなければカフェをやっていたはずだ。

ラマコーヒーに、もっともっと行きたかった。本当なら毎日通い詰めて、よしくんの淹れてくれるコーヒーを飲みながらまったり本を読んだり、よしくんやちあきちゃんやお客さんたちと話したかった。
でも、行かれなかったし行かなかった。
閉店の知らせを聞いて、やっとやっと時間を作って4回行った。
そしてますます、もっともっと通い詰めておくんだったと後悔した。
どうしてこの空間をもっともっと堪能しなかったんだろうと。

去年、とても好きだった茅ヶ崎のカロカロハウスがなくなった。
そして、今度はラマコーヒー。

ずっとそこにあると思っていた。
時間が出来たら行けばいいと思っていた。
でも、そんな思いでは時間はたぶん、いつまで経っても出来ないし作れない。

お店がなくなってしまうということは、もうその店にまつわる全てのことが思い出の中だけのものになってしまうということ。
その店が提供してくれていた全てのものが、どんなに惜しんでも悔やまれても、失われてしまうということ。

もし大好きな店があったら、その店に長く続けて欲しいという思いがあったら、ファンとして、なるべくそこに行くということは、本当に大切なことなんじゃないだろうか…

わたしも店をやっているから、こんなことを言うと誤解されるかもしれないが、わたしの店が如何の斯うのいうのではなくて、一個人として、どこかの店のファンの一人として、大好きな店にこれからは時間を作り出してでも通おうと思う。

わたしは自分の店の店主だけれど、当然他の店の客でもある。
本当に客というのは気まぐれなもので、大好きな店があっても、そこの提供してくれるものが大好きでも、なかなか行かなかったりする(わたしはそうだ)
好きだなあ、素敵だなあ、どこよりも美味しいなあと思っていても、だ。

もうそんなことはやめようと思った。

ちょっとだけ遠くても、雨が降っていても可能な限り行こう。
忙しいならほんの短い時間でもいい。
時間とお金を作り出して、大好きな店に通おう。

なくなってしまう時に、「もっと行っておけばよかった」と後悔するのはもうたくさんだ。
自分のためにも、大好きなお店の為にも…

ラマコーヒーは、店主のよしくんの控えめな性質とは裏腹に、本当に色々なところで名前を聞くカフェだった。
 
仕事やプライベートで出会う多くの人が、ラマコーヒーを知り、愛していることに驚いた。

本当に大好きな店のことは、人に言いたいような秘密にしておきたいような…複雑な心境になることがある(わたしはある)のだけれど、教えた方がいい。

たぶん自分が大好きな店は、他の人もやっぱり大好きになると思うから。

よしくん、ちあきちゃん、長い間お疲れさまでした。
素敵な思い出をありがとう。

よしくんたちが育てるお野菜は、きっとやはり特別なお野菜になることでしょう。作物には、明らかに、そして確実に人柄が表れるから。

ラマコーヒーのよしくんたちの作った美味しいラマ野菜を使った、美味しいパンを焼いてみたいと思っています。

最後の2枚の画像はラマスペース最後の展示Osamu Nakamura画伯の絵画たち。

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長い文章を最後まで読んでいただいてありがとうございます。


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茅ヶ崎市共恵にある小さなパン屋psipsinaです。

《ワインに合うパン》をコンセプトにパンを焼いています。

すべてのパンを、店舗奥の製造室で育てている自家製天然酵母だけを使って焼いています。

家族の一員である可愛いペットと同じように、自家製天然酵母を慈しんで育てています。

そうやって丹精込めて育て上げた自家製天然酵母とゲランドの塩、鉱水、きび糖、粉だけを使い、白砂糖、保存料不使用の完全無添加で生地を仕込み、長時間低温熟成で12時間〜36時間の発酵時間を取り、小麦の持つ旨味を最大限に引き出して焼き上げています。

滋味豊かで味わい深いpsipsinaのパンは、酵母の具合に合わせて、毎日少しずつ味わいが変わります。



ワインに合うパンがコンセプトということで、基本はレーズン酵母ですが、季節によって生のフルーツや、ヨーグルト酵母を使ったパンもございます。

自宅でパンを焼くときのように、いつも健康でいて欲しい大切な人のお食事を作るように、体にいいものを使って、美味しくなるようにフィリングもなるべく沢山入れて、そして余計なものは入れないパンを焼いています。



psipsina(プシプシーナ)

〒253-0056
神奈川県茅ヶ崎市共恵1-16-12
☎︎0467-38-6067

Open: 月水金土 9:00〜20:30(不定休あり)
(季節や温度によって発酵に時間がかかり、Openが遅れることがあります)